どうせ、こうなる運命
男は、急にその場に止まった。
なに…?
男は、すっと私のいる後ろを向く。
腕は離してくれないまま。
一瞬バチりと目が合い、思わずその瞳から逃げるように目をそらす。
唐突なことだった。男は、ポケットから何やらサングラスを取り出し、私に掛けてきた。
「っぎゃ…」
変な第一声が出てしまい、思わず口を噤む。
男は私の声に、地味にふっと笑っていた。
そして、後ろを向けと指示されたので言う通りに後ろを向くと、髪に触れられている、という慣れない感触を感じた。
「…髪なら自分で結べますが」
男は無視をして、輪ゴムで私の長い髪を束ねる。すると、首もとに急な痛みが走る。
「っ…」
「悪い、ゴム切れた」
「だから自分で結べます」
「あ、はい、お願いします、じゃあ」
舌打ちしたい精神を押さえながら、私は、見られていることもあるので素早いスピードで髪をくくった。
それから、深い帽子を被せられる。帽子には、束ねた髪を無理矢理入れられる。
「変装な?ここ、男子寮だし止められる」
連れてこられた先は、どうやら、男の部屋。
部屋の前には刑務官が見張りをしていたが、男の言う通りにした変装は運良く上手くいったようで、何も、言われずに済んだ。
「ほら、入って」
恐る恐る、中に入る。
帽子やサングラス、束ねた髪を手解きながら、壁、天井、床、ひとつひとつの物を見渡す。
女子寮と変わらない。畳があって布団があって小型のテレビがあって、小さな窓から、金属棒とガラスを境に光が差している。