どうせ、こうなる運命


男は、急にその場に止まった。


なに…?


男は、すっと私のいる後ろを向く。

腕は離してくれないまま。

一瞬バチりと目が合い、思わずその瞳から逃げるように目をそらす。


唐突なことだった。男は、ポケットから何やらサングラスを取り出し、私に掛けてきた。



「っぎゃ…」



変な第一声が出てしまい、思わず口を噤む。

男は私の声に、地味にふっと笑っていた。

そして、後ろを向けと指示されたので言う通りに後ろを向くと、髪に触れられている、という慣れない感触を感じた。



「…髪なら自分で結べますが」



男は無視をして、輪ゴムで私の長い髪を束ねる。すると、首もとに急な痛みが走る。



「っ…」

「悪い、ゴム切れた」

「だから自分で結べます」

「あ、はい、お願いします、じゃあ」



舌打ちしたい精神を押さえながら、私は、見られていることもあるので素早いスピードで髪をくくった。

それから、深い帽子を被せられる。帽子には、束ねた髪を無理矢理入れられる。



「変装な?ここ、男子寮だし止められる」



連れてこられた先は、どうやら、男の部屋。

部屋の前には刑務官が見張りをしていたが、男の言う通りにした変装は運良く上手くいったようで、何も、言われずに済んだ。



「ほら、入って」



恐る恐る、中に入る。

帽子やサングラス、束ねた髪を手解きながら、壁、天井、床、ひとつひとつの物を見渡す。

女子寮と変わらない。畳があって布団があって小型のテレビがあって、小さな窓から、金属棒とガラスを境に光が差している。
< 9 / 87 >

この作品をシェア

pagetop