デスゲームアイドル デスゲーム学園からの大脱出

「我々を裏切った報いは受けてもらうぞ、赤音ルルリ！」

異常事態なのにほとんど表情を変えていないルルリちゃんの表情が不機嫌そうなものに変わる。

「……裏切った？　私はちゃんと注文通りデスゲームをプレイしたでしょう」

そう吐き捨てるとルルリちゃんは私の方に向き直った。

「負けたのはそこにいる蒼ちゃんが私より強かったからよ」

そう言い放つと、ルルリちゃんの白い肌が少し紅潮したように見えた。

「ふん、もちろん、有月蒼(ありづきあおい)にもデスゲームには参加してもらう」

ほとんどのメンバーや観客たちは何かのサプライズイベントが始まったと思っているようだ。

「あれ、そういえばこの首輪、私もちょうど持ってるのよ」

たまたま持っていたような様子でルルリちゃんは衣装から同じ黒い首輪を取り出すと、素早い動きで早也果(さやか)ちゃんに取りつけた。

「えっ、なんで」

「なんでって、デスゲームをするんだったらお互いに命を賭けないといけないでしょう」

私は確信した。

デスゲーム学園で見せたあの悪魔の微笑だった。

「な、なぜ、おまえがその首輪を……うっ、うわあああっ！」

うろたえるビジョンの中の黒仮面たちが突然白いガスの様なものが噴射されて暴れ出した。

「えっ、ど、どうなってるの？」

白いガスを浴びた男たちはビジョンの中でバタバタと倒れていく。催眠ガスか何かだろうか。

「まったく、事前に奴らの襲撃の情報はつかんでたのに。わざわざ危ない橋を渡るなよ」

聞き覚えのある男の子の声がステージの後ろから響いた。

「あら、でもおかげでデスエンジェルの残党とうちのグループの裏切り者まであぶりだせたんだからいいじゃない」

後ろを振り向くとフードを目深にかぶった男の子が立っている。

私が驚きで何も言えずに立っていると男の子は私の元にやってきた。

「なんだよ、ぽかんとして。俺のこと忘れちゃったのかよ」

「どれだけ心配したと思ってるのよ！」

隠されていた顔には穏やかな微笑みが浮かべられている。

私はゆっくりと両手を拡げてその男の子を抱きしめて、その胸に顔を埋めた。

「ここがデスゲームで落とされた地獄の底の世界だとしても、私は絶対にシュウくんのことは忘れないわよ！」