片桐くんは空気が読めない
*
「ねぇ、あやのは彼氏とどこか出かけたりしないわけ?」
美奈の言葉に心臓が飛び跳ねた。
「あー、それうちも思ってた。あやのってあんまりsns に彼氏とのデートあげないよね」
「あはは、なんか、照れくさくって?」
私は走るペースを落として、二人の視線から離脱したくなった。
私たちは体育の授業で並んでグラウンドを走っている最中だった。
「ふーん?」
思いのほか冷たい美奈の視線にヒュッと喉がなりそうになる。
私は彼女から目線を外して言った。
そうでないと声が震えてしまいそうだった。
「……あ、でも今度の日曜日、デート行くよ」
「まじ? じゃあ、snsにあげなよ。私真っ先にハート押してあげるからさ」
沙羅が努めて明るく言った。私は沙羅の方しか見れなかった。
「snsにあげるのは少し恥ずかしいから、週明けにその時の写真を二人に見せるのでどうかな?」
「あぁ、それでもいいよ。な、美奈?」
「そうね」
体育が終わり、六限の国語の授業が始まっても私はずっと先ほどの美奈の態度が気になっていた。
美奈はとっくに気がついているのかもしれない。
私の嘘を。
「……、宮瀬!」
「っ、は、はい」
「ぼぉーとするな。67ページ一行目から読む」
あぁ、ついてない。
私には友人の死を背負った主人公よりも、今の自分の境遇の方が不幸だと思った。
「ねぇ、あやのは彼氏とどこか出かけたりしないわけ?」
美奈の言葉に心臓が飛び跳ねた。
「あー、それうちも思ってた。あやのってあんまりsns に彼氏とのデートあげないよね」
「あはは、なんか、照れくさくって?」
私は走るペースを落として、二人の視線から離脱したくなった。
私たちは体育の授業で並んでグラウンドを走っている最中だった。
「ふーん?」
思いのほか冷たい美奈の視線にヒュッと喉がなりそうになる。
私は彼女から目線を外して言った。
そうでないと声が震えてしまいそうだった。
「……あ、でも今度の日曜日、デート行くよ」
「まじ? じゃあ、snsにあげなよ。私真っ先にハート押してあげるからさ」
沙羅が努めて明るく言った。私は沙羅の方しか見れなかった。
「snsにあげるのは少し恥ずかしいから、週明けにその時の写真を二人に見せるのでどうかな?」
「あぁ、それでもいいよ。な、美奈?」
「そうね」
体育が終わり、六限の国語の授業が始まっても私はずっと先ほどの美奈の態度が気になっていた。
美奈はとっくに気がついているのかもしれない。
私の嘘を。
「……、宮瀬!」
「っ、は、はい」
「ぼぉーとするな。67ページ一行目から読む」
あぁ、ついてない。
私には友人の死を背負った主人公よりも、今の自分の境遇の方が不幸だと思った。