片桐くんは空気が読めない


「ついた、ここだ」

片桐くんはそういうと、ファミレスの中へ入っていった。

「片桐くん、私、たしかにどこでもついて行くって言ったけど、もうお昼食べるの?」

もっとこう、どこかで遊んだ後にランチの方がデートっぽいのではないか。

そう抗議したかったが、事情をぼやかして誘っているため、そうすることもできずにもどかしかった。

「バーカ、ここが今日のメインのメインだ」

「メインのメイン?」

お馴染みのファミリーレストランは、アニメのキャラクターで店内デコレーションされていた。

久しくアニメから離れていた身としては、なんだか懐かしい。

席に着くと、メニューも限定版と通常版に分かれているようだった。

「これって、コラボ?」

「そうだ。ここは、おけ部!!の限定ラッピング店舗だ」

言われてみれば、店内の放送も可愛い声の女の子でジャックされていた。

すると、グランドメニューを見ていた私から、片桐くんはメニューを取り上げた。

「すまないが、コラボメニューの方から頼む」

「え、」

「ちなみに特典のコースターは俺がもらうから」

「それは別にいいけど」

片桐くんはご機嫌で、注文用のタブレットを操作していた。

私はそんなにお腹がすいていなかったこともあって、ランチではなく、コラボのドリンクとスイーツを一品ずつ頼んだ。

片桐くんは人の金だと思って、ドリンク、メイン、デザート全てを注文していた。

私が言うのもなんだが清々しいほどに遠慮のない男だ。
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