片桐くんは空気が読めない
*
「今日はありがとう」
「別に。俺はただ飯の上、コラボグッズもゲットできてラッキーって感じ。ちゃんと推しも引けたし」
「黒髪ロングの子だっけ? 変わった趣味だよね」
私たちは最寄駅から家までの道を肩を並べて歩いていた。
遠くでカラスが鳴き、日が西に沈んでいく。
「俺のサランへの冒涜か?」
「いや、普通に一番地味というか控えめな感じがしたから。私だったら、ブロンドボブの活発そうな子がいいなって」
「そっちのが趣味悪いだろ」
「そう?」
「あぁ」
私たちの間に沈黙が落ちる。
それからしばらく黙ったまま道を歩いて、不意に沈黙を破ったのは片桐くんの方だった。
「なぁ、今日、どうして誘ってくれたんだ?」
「それは」
私は顔を上げる。
メガネと長い前髪が邪魔で、彼の表情は読み取れなかった。
でも、美奈と沙羅についた嘘を突き通すためなんて言ったら、片桐くんに軽蔑される気がして、私は「何となく」と誤魔化すしかなかった。
「今日はありがとう」
「別に。俺はただ飯の上、コラボグッズもゲットできてラッキーって感じ。ちゃんと推しも引けたし」
「黒髪ロングの子だっけ? 変わった趣味だよね」
私たちは最寄駅から家までの道を肩を並べて歩いていた。
遠くでカラスが鳴き、日が西に沈んでいく。
「俺のサランへの冒涜か?」
「いや、普通に一番地味というか控えめな感じがしたから。私だったら、ブロンドボブの活発そうな子がいいなって」
「そっちのが趣味悪いだろ」
「そう?」
「あぁ」
私たちの間に沈黙が落ちる。
それからしばらく黙ったまま道を歩いて、不意に沈黙を破ったのは片桐くんの方だった。
「なぁ、今日、どうして誘ってくれたんだ?」
「それは」
私は顔を上げる。
メガネと長い前髪が邪魔で、彼の表情は読み取れなかった。
でも、美奈と沙羅についた嘘を突き通すためなんて言ったら、片桐くんに軽蔑される気がして、私は「何となく」と誤魔化すしかなかった。