七夕はあなたに会いたい
 スマホに彼からの着信があった。
 しばらく迷ってから、電話に出る。
『なんとか仕事を終わらせた。こっちに来てるんだ。今から会えない?』
 スマホを握る手に力がこもる。

 あれからずっと悩んでいる。
 だけど、悩むだけではなにも解決しない。
 はっきりさせよう。

「私も会いたい」
 私はそう答えた。



 駅で待ち合わせると、彼はいつものように笑って私を迎えてくれた。
 その姿に、胸がちくんと痛む。

 七夕に遠距離の彼と会えるなんて、以前の私なら喜んでいたと思う。
 だけど、今日は違う。

 織姫と彦星がデートをするこの日に、私はきっと真逆の結果になるのだろう。
 遠距離でなかなか会えなくて、彼の気持ちが冷めてしまったのだとしても、それは仕方がない。

 近くのカフェでお茶をして、会ってなかった間の話をする。
 たわいもない会話に、いつもの和やかな空気が流れて複雑な気持ちになった。

 夕方、カフェを出ると一緒に遊歩道のある川べりを歩く。護岸工事でコンクリに囲まれた川で、街路樹として桜が植えられている。

「懐かしいな、ここ」
「そうね」
 彼が言い、私は頷いた。
 大学生のときもよく一緒にここを歩いた。
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