七夕はあなたに会いたい
「だって、女の人のために転職したんでしょ? 見たよ、仲良さそうにしてる人」
「誰のことだよ」
「改札で……女の人と一緒だった」
 言うと、彼は黙る。

 やっぱり、そうなんじゃん。黙るということは、答えられない関係ってことでしょ。
 思う私の耳に、思い出した、と呟く声が届いた。

「スマホを落とした人がいて、拾ってあげたんだ。それで同じ改札だったから、そのときは一緒にいたと思う。だけど、それだけだよ」
 私は驚いて彼を見た。彼は困惑したように私を見る。

「誤解してたから、元気なかった……のかな?」
「本当に? 信じていいの?」

「浮気なんてするくらいなら、遠距離でつきあおうなんて思わない」
 私はホッとして、大きく息を吐いた。

「俺って信用ないなあ」
「……ごめん」
 私が謝ると、彼は苦笑した。

「これからはこっちにいるから、誤解させなくてすむかな」
「そうだった。転職おめでとう!」
 私は改めてお祝いを言う。

「ありがとう」
 彼はうれしそうに笑った。

「でも、急ね。びっくりしたわ」
「ずっと考えてはいたんだ。異動願いを出しても異動させてもらえなくて。待ちきれなくて転職することにした。転職活動で忙しくてしばらく会えなかった。ごめん」
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