追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
成長してから会社員として働き始め、通勤途中に小説や漫画を読むことを楽しみにしていた。
そんなある日のこと。高熱が出て倒れたことまで覚えているがその後の記憶はない。

フランソワーズが記憶を取り戻したのは、マドレーヌと出会った瞬間だった。
暫くは彼女の記憶と前世の記憶が混ざり合って混乱していたが、ここが読んでいた小説の物語の中だと思い出す。

物語では描かれてはいなかったが、フランソワーズの今まで体験してきた痛みや苦しみは想像を絶するものだった。
体調不良で寝ていたいと訴えかけたとしても、当然のように『義務』だからと宝玉の前に引き摺られていく。
それには悔しくて血が滲むほどに唇を噛んでいた。
周囲もそれが当然だと思っていて、フランソワーズを労う言葉すらない。
そんな状況とフランソワーズの気持ちを知ってしまえば、ここで幸せになれないことはわかっていた。

フランソワーズはマドレーヌにすべてを渡してさっさと国を出て行こうと決意する。
この段階では父やセドリックとの関係を修復することはできはしない。
ただ、何もしないまま物語の終わりを迎えるのだけは嫌だった。

(せめてもう少し早く思い出せていれば……なんて悔いても仕方ないわね。今できることをやらないと)
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