追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
ステファンはフランソワーズからの合図を待っていた。
すると、わずかに何かが倒れる音と壁を叩く小さな音。
ステファンは迷ったが扉を開けた。
そこには力なく倒れているフランソワーズの姿があった。
呪われた本があった場所には、灰が積み上がっている。

ステファンはすぐにフランソワーズの元に駆け寄った。
医師を呼びに行かせて、水を持ってくるように頼む。
フランソワーズの唇が「みず」と動いたような気がした。
部屋を移動して水を差し出すものの、力が入らないようだ。

(……すまない、フランソワーズ)

心の中で謝罪してからグラスを傾けて、自らの口に水を流し込む。
それからフランソワーズに口移しで水分を渡してあた。
何度か繰り返すと、フランソワーズはホッとした表情を見せてから眠るように意識を失った。
ステファンはフランソワーズを強く強く抱きしめた。
今は彼女が無事でよかったと、心からそう思う。

(フランソワーズが無事で本当によかった……!)

余裕もなく、感情を露わにするステファンに周囲は驚いている。
いつも感情を動かさないように押さえ込み、自分を殺し続けたのだ。
永遠に続いていく苦しみ。
フランソワーズは呪いからステファンを解き放ってくれた。
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