追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜

三章

(セドリックside)

セドリックは嬉しそうに扉まで歩いていくフランソワーズの姿を見ながら唖然としていた。
周囲には気まずい雰囲気が流れていたが、セドリックはそれよりもフランソワーズの笑顔に驚いていた。

(フランソワーズは……あんな風に笑えたのか?)

いつも無表情で塔に閉じこもって、祈りばかり捧げているフランソワーズ。
セドリックが何を言っても反応は薄く、何をするにも完璧で両親にも認められているフランソワーズに、密かに嫉妬心と劣等感を抱いていた。

(コイツは少し聖女としての力が強い程度で持て囃されているだけだっ!)

外交やパーティーでセドリックが完璧に対応してもフランソワーズは軽々とそれを超えてくる。
『フランソワーズがいてくれたら、この国も安泰だわ』
『その通りだ。フランソワーズがいてくれるだけでいい』
両親の何気ない一言にセドリックのプライドは傷ついていく。

そんなセドリックを癒してくれたのはフランソワーズの義理の妹、マドレーヌだった。
彼女はセドリックの気持ちを理解して寄り添ってくれた。
こんなにも心温まる日々は初めてだと思うほどに。
表情豊かで可愛らしい笑顔を向けてくれる。
セドリックを肯定して、優しい言葉をかけてくれるマドレーヌに自然と気持ちは傾いていく。
それにマドレーヌは街では自分から進んで困っている人たちに手を差し伸べ、聖女としての実力を高めていたそうだ。
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