追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
セドリックがマドレーヌに声を掛けようとすると、いつもと違う様子に気づく。
俯いて肩を震わせるマドレーヌの名を呼ぶと、彼女はハッとした後に笑みを浮かべてこちらに駆け寄ってくる。


「マドレーヌ、随分と時間が掛かったようだが……」

「……。初めてですし、パーティーの後にで疲れてたんです」

「そ、そうか」


マドレーヌはそう言ってはいるが、フランソワーズはパーティーの後だろうと夜通しだろうと宝玉に祈りを捧げてていた。


「お父様やお母様にも報告たいので、一度ベルナール公爵邸に帰ってもいいですか?」

「あ、ああ」

「失礼します……っ!」


マドレーヌは逃げるように去って行ってしまった。
セドリックが宝玉に目を向けてみると、完全に宝玉は綺麗になっていないことに気づく。

(そんな……まさかマドレーヌは宝玉を完全に浄化することなく逃げたというのか?)

セドリックの頭に過ぎる不安。
マドレーヌはあれだけ自身満々に言っていたのだ。
初めてでうまくいかなかっただけだと言い聞かせていた。

(マドレーヌなら大丈夫だ。もしマドレーヌが嘘をついていたら?)

セドリックの背筋がスッと寒くなっていくのを感じていた。
しかし黒く穢れが残っている宝玉に背を向ける。


──この選択が大きな誤ちだったと気づかずに。



(セドリックside end)
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