追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
そんなことを思い出しながら、フランソワーズは窓から流れる景色を見ていた。
微かに指が震えるのは何故かはわからない。
そんな些細な変化にも、ステファンはすぐに気付いたようだ。


「フランソワーズ、どうしたの?」

「いえ……こうして街に出かけることが初めてなので、緊張しているのかもしれません」

「初めて……? 本当に?」

「はい。わたくしは城で聖女としての仕事をしてばかりでしたから」

「フランソワーズは、フェーブル王国でやってくれているようなことをしていたのかい?」

「……いいえ」


フランソワーズは顔を伏せた。
もうシュバリタイア王国と関係のないフランソワーズが、今更悪魔の宝玉のことをステファンに話す理由もない。
このことは、他国にひた隠しにしていた。

シュバリタイア王国にとって、宝玉の存在は大きな負担になっている。
しかしフランソワーズがそれを一人で抑えられるようになってからは、その大変さは忘れられていった。
当たり前のようにフランソワーズは国に尽くしていた。
自分の幸せを犠牲にしながら……。


「重要な役目があったのです。ですが……もう忘れたいですわ」

「……そうか。辛いことを思い出させてすまない」
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