追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
確かに貴族の令嬢ならば戸惑いそうだが、フランソワーズは何も戸惑うことがなかったため驚いたのだろう。
フランソワーズは必死に言い訳を模索していた。


「その……街に密かに憧れていて、色々と聞いたり調べたりしていたのです!」

「……そうか」

「このパンの食べ方は侍女に聞いたことがあって、たまたま知っていただけですから……!」


ステファンは、フランソワーズの言っていることを信じてくれたようだ。
隣でステファンはパンを口にする。
その姿すら上品に見えて絵になってしまう。

(何もかもが完璧なのよね、ステファン殿下は……)

フランソワーズは満腹感にホッと息を吐き出した。
簡易的なコルセットのためか、まだまだ食べ物が入りそうだ。

それからステファンに案内してもらいながら街を見て回った。
気になる露店に寄っては食べ物を口にする。
フランソワーズの知識にもないものばかりで、すべてが真新しく新鮮に思えた。

フランソワーズが目を輝かせて、周囲を見ているのをステファンは優しい瞳で見ていたことも知らずに前を歩いていく。
一通り街を巡って歩いた後に、本来寄る予定だった宝石店とドレスが売っている店へと向かった。

フランソワーズとステファンが店に入ると、変装した格好のせいか最初は不思議そうにしていた店員たち。
しかしステファンの顔を見て、すぐに誰か気がついたのか深々と腰を折る。


「今日はお忍びで来たんだ。僕が想いを寄せている彼女に最高のドレスを用意してくれ」

「……ステファン殿下!?」

「僕がそうしたいんだ。だめかな?」
< 141 / 204 >

この作品をシェア

pagetop