追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
ステファンの問いかけにフランソワーズは小さく頷いた。
店員は頭を下げて髪飾りを受け取った。
何も言わないフランソワーズにステファンは声を掛ける。


「もしかして無理をさせてしまったかな?」


心配そうな声が聞こえてフランソワーズは顔を上げる。
そして小さく首を横に振った。


「フランソワーズ?」

「ス、ステファン殿下の……瞳の色や髪の色のものばかり選んでいることに気づいてしまって」

「え……?」

「先ほどオーダーさせていただいたドレスも、気づいたら青色の生地や黒の刺繍を選んでいました」

「……!」

「なんだか恥ずかしくなってしまったんです。申し訳ありません……」


言葉にするとますます恥ずかしくなり、カッと赤くなる頬。
ステファンは大きく目を見開いた後に、人前にもかかわらずにフランソワーズを抱きしめた。
今は貸切のため他に客はいないが、店員たちは驚いている。


「ス、ステファン殿下?」

「……そんなに可愛らしいことを言われたら我慢できなくなる」


触れている部分から熱が伝わっていく。
ステファンの心臓の鼓動が聞こえてくる。
フランソワーズはどうすればいいかわからずに困惑していた。
宝石店の店員たちの視線もあるため、フランソワーズは声を上げる。


「ス、ステファン殿下、公の場ですから……そろそろ!」

「ああ、すまない」


ステファンの体がスッと離れたのだが、自分から言っておいて少し寂しく感じてしまう。
< 147 / 204 >

この作品をシェア

pagetop