追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
フランソワーズは、無意識にステファンにすり寄るようにして肩に頭を置いた。
彼女の手が、ステファンの服の裾をギュッと握っている。
ステファンはそっとフランソワーズの手の甲に重ねるようにして手を置いた。
手のひらから伝わる熱すらも愛おしい。

(……今のシュバリタイア王国のことを、フランソワーズに伝えたら彼女はどうするだろうか)

フランソワーズがシュバリタイア王国から消えて一カ月。
国は大きくバランスを崩しているらしい。
シュバリタイア王国は何かを隠していることは、ステファンも薄々ではあるが知っていた。
聖女や悪魔祓いの知識、その不透明さが小国ながらシュバリタイア王国がここまで生き残っていた理由だろう。
何かが違う……その正体がわからない限り踏み込めないのだ。
それはシュバリタイア国王からの言葉からもわかることだった。

『我が国は聖女と共に大切なものを守っている。それは我が国どころか全世界を揺るがすほどの強大な力だ』

それが陳腐な脅しではないことは、なんとなくではあるがわかっていた。
聖女の力が大きく関わっており、力の強い聖女を国外に出せないのもそのような理由があるからだろうと推察できる。
恐らくフランソワーズはその『何か』を守るために、自分の時間を犠牲にしていたのかもしれない。
だからこそ街に行く時間もないし、ドレスを買ったりしたこともない。
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