追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
セドリックの発言にマドレーヌは言葉を失っていた。

(ひどい……!なんてこと言うのよ)

あんなにも優しい言葉をかけてくれていたのに力がないとわかった途端、セドリックら手のひらを返した。
涙が溢れ出しそうになりながらも、マドレーヌは声を上げる。


「信じられないっ! 裏切り者っ」

「裏切り者はどっちだ!」

「もうこんな宝玉どうでもいいっ! 大っ嫌い」

「おい……!」


マドレーヌはそのまま逃げ帰るように、ベルナール公爵邸に帰った。

(こんな国を守るために力を使うことなんてないわ。あんなこと言うなんて許せない!)

マドレーヌは部屋に閉じこもって城に行くことはなくなった。
両親は扉越しに語りかけてくるが、それすらも煩わしい。
それからどんどんと真実が明かされていくたびに、扉を叩く音は強く、声色は恐ろしくなっていく。


「──マドレーヌ、マドレーヌッ!」

「マドレーヌッ、早く部屋から出て自分の役目を果たしなさいっ!」


数日の間、マドレーヌの代わりに王妃がつきっきりで宝玉に祈りを捧げていると聞いたが、苛立ちしか感じない。
今まではフランソワーズが一人でやっていた仕事だが、本来は王妃だってやらなければいけないことだ。
それを棚に上げて、マドレーヌにすべてを押し付けようとしていることが腹立たしい。
< 162 / 204 >

この作品をシェア

pagetop