追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
(信じられない……っ!そんなことできるわけないでしょう!?)

シュバリタリア国王の隣にいるセドリックに視線を向けても、もちろん助けてはくれない。
仄暗い表情で「俺は悪くない」と、ブツブツと呟いている。
父も母も、マドレーヌを見捨てたそうだ。
マドレーヌが知らない間に、何もかも壊れてしまったのだ。

(なんでわたしだけこんな目に遭うのよっ……!)

宝玉の間に投げ込まれるようにして、閉じこめられたマドレーヌはひたすら扉を叩いていた。
マドレーヌが振り返ると、そこには王妃や複数の令嬢たちの姿があった。
フランソワーズを追い出した時に、マドレーヌに協力して嘘をついた令嬢たちだ。
どうやら嘘をついたことで罰を受けているようだ。
涙目でこちらを睨みつけて、暴言を吐いてくる。
彼女達が囲んでいる宝玉は半分以上、真っ黒に染まっている。
あまりの禍々しさに「ヒッ……!」と、引き攣った声を上げた。

王妃はマドレーヌに掴み掛かる。その顔は怒りに満ちていた。


「──あなたのせいよ!」


爪が皮膚に食い込んで痛みからマドレーヌは叫んだ。


「い、いた! 離してっ!」


げっそりとした王妃の頬はこけて、以前の面影がないほどにひどいものだった。
血走った目は見開かれており、殺意のこもった視線は恐ろしい。

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