追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜

「……!」


マドレーヌは正気に戻ったのだろうか。
言葉の意味がわからずにいたが、彼女の足先が宝玉のように灰になり崩れていくのが見えた。
足が消えて、マドレーヌは目に涙を溜めながらこちらに手を伸ばして助けを求めている。


「こんな物語はありえないっ、助けてぇ、助けなさいよ! たすっ……!」


そして口元まであっという間に崩れ去ってしまったことで、悲痛な叫び声はピタリと聞こえなくなる。
どうやら悪魔に乗っ取られていたマドレーヌは、宝玉と同じように灰になってしまう。
マドレーヌがいた場所には灰が積み重なっていた。

(マドレーヌは完全に消えてしまったの?)

しかしフランソワーズはわかっていた。
今まで祓った悪魔が取り憑いたモノは灰になり、二度と戻らないことを……。
彼女は恐怖と絶望感の中、物語からいなくなってしまった。
マドレーヌをずっと抑えていたイザークとノアもホッと息を吐き出している。


「フランソワーズ……?」


ステファンに名前を呼ばれたフランソワーズは顔を上げた。
すると彼はフランソワーズの汗で額に張り付いた前髪をすいた。
フランソワーズも左手を伸ばしてステファンの頬をなぞる。


「……フランソワーズが無事でよかった」

「ステファン殿下がわたくしに力をくれたんです」
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