追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
「……離してくださいませ」

「もう一度問うよ。どこに行こうとしているのか聞いてもいいかな?」


ステファンは珍しく焦っているように見える。 

(ステファン殿下はいつも紳士的だけれど、今日は随分と強引なのね)

ステファンは常に笑顔でいて紳士的な対応をしている。
中性的な端正な顔立ちとは逆の細身ではあるが引き締まった肉体。
ひたすらに己を鍛え上げて剣を極めており獰猛な猛獣を一人で倒してしまうほど強いそうだ。
噂では彼の体には黒い刺青のようなものが入っているそうで、常に血に飢えている恐ろしい一面があるという。

そんなギャップも相まってか、シュバリタイア王国の令嬢たちからも大人気だったことを思い出す。
フェーブル王国という大国の王太子である彼に婚約者はいない。
婚約者はおろか、特定の女性と親しくしているところも見かけない。

しかしフランソワーズには度々、声をかけてくれていた。
いつもセドリックとパーティーに出ている際に、一人でいるステファンを見てフランソワーズは不思議に思っていたのだ。
モテる彼ならば相手に困らないだろうし、誠実そうなので婚約者を幸せにしそうだ。
そんな彼が、このタイミングでフランソワーズに接触したことが意外だった。


「どこにいくのかは……内緒ですわ」

「……そうか」
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