追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
フランソワーズがステファンから逃れようとするものの、彼は気にする様子はない。
それから当然のように誰もいない城の廊下でステファンに抗議するように口を開く。
 

「このっ……離してくださいませ!」

「いつもあんなに淑やかだった君が、こんな風におてんばだったなんて感慨深いね」

「ステファン殿下、いい加減にしてください!」

「フランソワーズ嬢、あまり騒ぐと気づかれてしまうよ?」

「……っ!」

「僕はただ話を聞いて欲しいだけなんだ。だからこのまま大人しくしてくれるかい?」


いつもの紳士的な笑みも今回ばかりは意地悪に見える。

(話を聞いて欲しいって……ステファン殿下はわたくしと何を話したいのかしら?)

ステファンは城の外に向かっているようだが、こんな風にしているところを見られたらステファンだってよくないだろう。
人を呼ぼうとするが、それではフランソワーズも逃げることはできなくなってしまう。

(わたくしの自由が……っ、どうしてこんなことに)

やっと自由を手に入れられると意気込んだ途端に、希望を取り上げられてしまった気分だ。
とりあえずステファンから逃げることを諦めたフランソワーズは、彼に抱えられながら呆然としていた。
< 28 / 204 >

この作品をシェア

pagetop