追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
辺りを見回すと、目が合った瞬間に不自然なほどに視線を逸らす令嬢たちの姿があった。

(……嘘をついてまでマドレーヌの味方をするなんて。マドレーヌは彼女たちを救ったのかしら?)

結局はこのような結末になるのだとわかっていたからか、フランソワーズはさして驚きはしなかった。

(さて……ここまでは物語通りに進んでいるのかしら)

フランソワーズ・ベルナールは、前世で読んだ小説の悪役令嬢だった。
金色の美しい髪は腰まで伸ばしており、パーティーの場に合わせてキッチリと結えている。
吊り目とガラス玉のような赤い瞳はキツイ印象を受ける。
今日も深みのあるディープグリーンのドレスは胸元や裾に金色の刺繍が施されて上品だ。
マドレーヌや同じ年頃の令嬢と比べれば、華やかさに欠けて地味に映るだろう。

幼い頃から王妃になるためにと厳しい教育を受けていたフランソワーズの感情の動きはほとんどなくなってしまった。
彼女はずっと王家のために尽くしてきた。
ベルナール公爵家の人間として、完璧に振る舞うことを強制されて失敗すると厳しい罰を受けたからだ。
フランソワーズは抵抗しても無駄だと気付いて、自分の感情を押し殺してしまう。
人形のように無表情で感情のないフランソワーズを不気味だと言う人もいた。
しかし令嬢として完璧な立ち居振る舞いや、皆が羨む美貌を持っていたことで彼女は他の令嬢たちを圧倒していた。
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