追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
「ステファン殿下には婚約者はいないのですか?」

「残念ながら僕には婚約者はいたことがないんだ」


こんなにできた王太子はどこの国を探してもいないだろう。
ステファンが眉を寄せて荒く息を吐き出したのを見て、フランソワーズは祈りを捧げるように目を閉じる。
するとステファンは体が楽になったのかホッと息を吐き出した。
フランソワーズはステファンが遠慮しているのかもしれないと声をかける。


「ステファン殿下、わたくしの前では我慢しなくて大丈夫ですから」

「……!」

「すぐに対応できますので」


ステファンの目が大きく見開かれている。
その後、ステファンを額を手のひらに当てる。
ほんのりと頬が赤くなっているような気がした。


「そんな嬉しいことを言われたのは初めてだよ」


彼が照れている姿を見て、つられるようにしてフランソワーズの顔も赤くなってしまう。
互いに見つめ合った後に、そっと視線を逸らす。
誤魔化すように咳払いをしたステファンは、手首から見える黒いアザを撫でた。


「もしかしてその体のせいですか?」

「ああ……これが体に現れた時から、破壊衝動が抑えられなくなっていった」

「……!」


フランソワーズは、ステファンが苦しんでいた時のことを思い出していた。
あの状態になると教会で時間を過ごすか、何かを破壊し尽くすまで止まれないそうだ。
< 53 / 120 >

この作品をシェア

pagetop