【受賞しました】追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
「わ、わたくしは逃げようとしたわけではありませんわ!」

「……え?」

「こんな身なりでフェーブル国王陛下と王妃陛下の前に出るのはよくないかと思いまして……っ」


フランソワーズがそう言って、恥ずかしさから顔を覆う。
周囲の視線を集めていることがわかったからだ。
ステファンはフランソワーズの言葉を聞いて、ハッとしたような表情を見せた。
そしてフランソワーズをその場に下ろす。
フランソワーズの手を取ると眉を顰めたステファンはそっと視線を逸らす。


「すまない……僕の勘違いだ」

「いえ……」

「フランソワーズと離れたくなくて、つい身勝手な行動をとってしまった」


ステファンの言葉の意味が気になって見上げると、彼の頬はほんのりと色づいている。
彼のこの表情や言葉に勘違いしてしまいそうになり、フランソワーズは首をブンブンと横に振った。

(ま、まさか……そういう意味なわけないわよね!)

フランソワーズでなければオリーヴを救えないからだという意味だと言い聞かせていた。
ステファンと向き合ったままフランソワーズは黙り込む。

そんな様子を見ていたフェーブル国王や王妃は何かを感じとったのだろう。
顔を合わせて頷いた後にこちらに向かって歩いてくる。
人の気配を感じたフランソワーズはハッとして急いで髪を整えた。
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