追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
ステファンはフランソワーズをフォローしようとしてくれているのだろうか。
にっこりと笑ったステファンは、顔が真っ赤になったフランソワーズに気づいているだろう。
気にしていないと言わんばかりに、エスコートのために手が伸ばされる。
彼の好意を無碍にすることもできずに、恥ずかしさから震える手でフランソワーズはステファンの手を掴む。


「……可愛い」


ポツリと呟くように聞こえた声は空耳だろうか。
手を引かれて抱き込まれるようにステファンの腕の中へ。
筋肉質な肉体にシャツ越しに触れると先日のステファンの体を見てしまった時のことが頭を過ぎて、さらに顔が赤くなる。
先ほどからステファンにペースを乱されっぱなしで悔しいような複雑な気分だ。

フランソワーズは乱れた髪を直す暇もなく、門へと向かう。
シュバリタリア王国の城も十分に立派なのだが、倍以上大きさで豪華な装飾が施された門。
見上げると首が痛くなるほどの城の高さに、開いた口が塞がらない。

フランソワーズはセドリックの婚約者になってからは、塔で祈りを捧げていた。
他国への外交は行ったことない。
代わりに国王や王妃が率先して外交に行っていたことを思い出す。
こうして他国に来たのも初めてだ。
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