追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
『無表情なお前と食事をすると料理が不味くなる気がするな』

『…………そうですか』

『もう少し感情豊かにできないのか?』

『善処します』


淡々と受け答えをしたフランソワーズだったが、その日からセドリックと一緒に食事をすることをやめた。
彼は軽口のつもりだったのかもしれないが、フランソワーズの心に傷は残っていたのだろう。

気持ちを踏み躙ら続けたフランソワーズは、誰ために休む間もなく祈っていたのだろうか。
だんだんと悔しい気持ちが湧き上がってくる。
たとえフランソワーズがセドリックの前で笑顔で食事をしたとしても、マドレーヌと同じようには接することはないのだろう。

そんなことを思いながらステファンと共に夕食の席へ。
今は前世の記憶が戻ったため感情があるが、マドレーヌやベルナール公爵家の侍女たちの前で、物語のフランソワーズと同じように振る舞っている時は窮屈だったことを思い出す。
それほどまでに感情を押し殺さなければいけなかった。

幼い頃からフランソワーズの自由は何一つ与えられなかった。
感情を無くしてしまったのも、そうして追い詰められてしまったのが原因だろう。
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