追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
シュバリタイア王国もフェーブル国王の必死な様子を見てか、何かあると察したのだろうか。
そのまま有耶無耶になってしまう。
前々からシュバリタイア王国はフェーブル王国を警戒していたことは知っていた。
聖女の件で、どちらに転んだとしても彼らにとっては変わらない。
父が難しい選択を迫られていることはわかっていた。
子供二人か、国か……。

ステファンとオリーヴが呪いを受けたことで、母は悩んで痩せ細ってしまった。
国民たちを不安してはいけないと、このことは伏せられていた。
オリーヴは不治の病にかかったことにして、ステファンはいつも通りに過ごすことを心がける。
誰もこの苦しみを理解することはできないだろう。
恐怖や不安を感じるたびに黒いアザはステファンの体を埋め尽くすように広がっていく。

(少しでも気を抜くと、意識を乗っ取られてしまいそうだ)

気を紛らわせるためにひたすら体を鍛えて、時には猛獣を倒しにわざわざと辺境の地に向かった。
血を求める浅ましい自分に驚くのと同時に恐怖が襲う。
そんな気持ちすらも悪魔の餌となると書かれていたため、笑みを浮かべながら必死で自分の気持ちを隠していた。

年月が経つたびにオリーヴはベッドから起き上がれないほどに衰弱していく。
焦りだけがステファンを襲う。
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