鈴志那優良の短編集
目が覚めると、自分のベッドで眠っていた。時刻は11時前。今日の大学は昼からだから全然この時間でいいのだが、今日はそういえば茜と約束をしていた。
『どーした?栞?』
メッセージが何件か入っており事情を説明するしか無さそうだ。
『ごめん、昨日飲んでて寝てた。今からでも大丈夫?』
『大丈夫だよ!お疲れ様』
準備を終わらせて、待ち合わせ場所へと急ぐ。まだ整理がついていない気がするが、そんなことを気にしている余裕は無い。
待ち合わせ場所へと着くと茜が待っていた。雑念を振り払い私は声をかけに行く。
「ごめんね。待たせたよね。なんか奢るよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
カフェへと入り、最近の話で盛り上がる。茜は私と違って明るくみんなのムードメーカーみたいな感じで私の憧れだ。なんで私の友達なんだろうと疑問になることもある。でも私はズバズバ言ってくれる茜が頼りになって居心地がいいのだ。
「でね、私好きな人ができたんだ」
「おめでとう!誰なの?」
「橋本湊くん!」
時が止まったように錯覚した。頭が真っ白になっていく。私たちの関係のことなんて言えない。一般的にも理解できない関係なのに。
「そうなんだね。頑張ってね」
精一杯の返しだった。
「うん!ありがとね」
ブー。このタイミングでスマホが鳴りだした。私はスマホへと視線を落とす。橋本からだった。
『連日でごめん。今夜はどう?』
私はスマホを置いて再び茜の方を向いた。不審がられないように「大学の通知だった」と言いながら。
その後も何気ない会話が続いた。
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