鈴志那優良の短編集
『葉月、暇?』
翌日、私は葉月へと連絡を入れていた。これはさすがに相談した方がいいと思ったのだ。
『ひまだよー!カラオケでも行く?』
葉月は歌うことが好きなのでよくカラオケに誘ってくる。でも今日したいのは相談なのだ。
『実は相談したくて』
私からの相談が珍しかったのか文章からも驚いた様子が伝わってきた。
『どうしたの!?ご飯行く?』
『ご飯いこ』
私たちは大学近くの安めのレストランへ行くことにした。

「美奈、お待たせ」
ちょっと遅れてやってきた葉月はいつもと変わらないでいてくれた。今はそれがとても安心できた。
「レストランでゆっくり話そ」
そういうとレストランへ入り、店員が来るのを待った。その間も「どうしたの」などは一切聞かずに他愛もない話をしてくれた。すると店員が「何名様ですか?」とやってきたので「ふたりです」と答え席へ案内してくれた。私は席に着くなり我慢できずに話してしまった。
「実はね、眞斗が私をちゃんと見てくれているか分からないの」
葉月は頷き、真剣に聞いてくれるようだ。
「キレイだねとか、オシャレだねとか、服装のこととか何も言ってくれなくて」
そしたら葉月は笑った。
「そりゃあ不安になるわ!」
私だけじゃないんだ。見られていないと不安なのは私だけじゃないんだ。あの雑念は普通のことで他の人も感じている事だったんだ。
「じゃあやることはひとつ」
そう言って葉月は指を1本立てた。
「そのまま伝えることだよ」
私は驚いた。そんなことでいいんだ。そのままそれが不安だということを伝えていいんだ。
「そうなんだね!私なんで悩んでたんだろ!」

そのまま私たちは笑いながら楽しい話題へと切り替わっていった。

そして私は帰路へと着く。
帰るなり私は自撮りをする。そして加工。そのままSNSへ。これは毎日やっていること。これもやってていいんだ。今日はやけにいいねが多い。

私はそれまでは憂鬱な気持ちで寝ていたが今日は満ち足りた気持ちで眠ることができた。
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