鈴志那優良の短編集
おいていく
私は止まってしまった。20歳の時に止まってしまったのだ。時が止まってしまった。老いることが無くなってしまった。30歳の頃には両親や姉や祖父母に気持ち悪がられ、そのまま疎遠になってしまった。絶縁と言った方が正しいのだろうか。友人も気味悪がり連絡が一切取れなくなってしまった。今までは「若いな」と言われていたことも、さすがにここまで老けないとなると別の話らしい。
市役所には40歳を過ぎたあたりからは市役所から不審に思われ身分を証明することも出来なくなってしまった。会社からも気味悪がられ辞めてしまった。
完全に止まってしまったのだ。私の存在ごと止まってしまった。何もかも止まってしまった。
46年あっという間だったのか、長かったのか。後者だった気もするけど今はもう関係ない。もう頼るところなどどこにも無い。身分を証明できないのだから。
もう私にはこうするしか残ってないのだ。ここで終わりにするしかないのだ。どうにかして市役所の手続きができるか考えた。頼れる人がいないか、連絡がつくものがいないかも考えた。ひたすらメッセージを送った。一通も返ってこなかった。
もういいだろう。終わりにしよう。
私は歩き始めた。先を真っ直ぐ見つめながら、これでやっと楽になれるのだと考えながら。足元から冷たい感覚が広がっていく。濡れていく感覚が伝わってくる。もうすぐで終われる。やっと解放されるのだ。私はきっと微笑んでいただろう。水が膝まで浸かる感覚を感じたその時後ろにグイッと引っ張られる感覚を感じる。
「何をしてるんですか!?」
私は困惑した。何を言っていいのか分からないでいるとその腕を掴んだ女性がさらにこう言った。
「危ないですよ?こんな所にいたら」
私はクスッと笑ってしまった。
「そうね。ありがとう」
そのまま彼女に引かれる形で岸へと上がった。
「何をしていたのですか?」
「少し落し物をしていたのよ」
私は誤魔化すようにそう言った。本当のことを言ったら彼女を驚かせてしまうだろう。結果はともあれ止めれたのだから彼女は自分を彼女は褒めるのだろうか。それとも私を怒るのだろうか。分からない。人間というものが正直私には怖い。もう信用できる人などこの世に存在しないのだから。
なにしろ機会を改めることにしよう。終わりの日が明日になるだけだ。さすがに彼女も明日まで邪魔をしてくるわけがないだろう。
だが私の止まっていたはずの時は少しだけピクリと動いたようなそんな気がした。
市役所には40歳を過ぎたあたりからは市役所から不審に思われ身分を証明することも出来なくなってしまった。会社からも気味悪がられ辞めてしまった。
完全に止まってしまったのだ。私の存在ごと止まってしまった。何もかも止まってしまった。
46年あっという間だったのか、長かったのか。後者だった気もするけど今はもう関係ない。もう頼るところなどどこにも無い。身分を証明できないのだから。
もう私にはこうするしか残ってないのだ。ここで終わりにするしかないのだ。どうにかして市役所の手続きができるか考えた。頼れる人がいないか、連絡がつくものがいないかも考えた。ひたすらメッセージを送った。一通も返ってこなかった。
もういいだろう。終わりにしよう。
私は歩き始めた。先を真っ直ぐ見つめながら、これでやっと楽になれるのだと考えながら。足元から冷たい感覚が広がっていく。濡れていく感覚が伝わってくる。もうすぐで終われる。やっと解放されるのだ。私はきっと微笑んでいただろう。水が膝まで浸かる感覚を感じたその時後ろにグイッと引っ張られる感覚を感じる。
「何をしてるんですか!?」
私は困惑した。何を言っていいのか分からないでいるとその腕を掴んだ女性がさらにこう言った。
「危ないですよ?こんな所にいたら」
私はクスッと笑ってしまった。
「そうね。ありがとう」
そのまま彼女に引かれる形で岸へと上がった。
「何をしていたのですか?」
「少し落し物をしていたのよ」
私は誤魔化すようにそう言った。本当のことを言ったら彼女を驚かせてしまうだろう。結果はともあれ止めれたのだから彼女は自分を彼女は褒めるのだろうか。それとも私を怒るのだろうか。分からない。人間というものが正直私には怖い。もう信用できる人などこの世に存在しないのだから。
なにしろ機会を改めることにしよう。終わりの日が明日になるだけだ。さすがに彼女も明日まで邪魔をしてくるわけがないだろう。
だが私の止まっていたはずの時は少しだけピクリと動いたようなそんな気がした。