キミには一番星を

「そうですね。今からあなたもこの中のどれかの衣装に着替えてもらいます。ま、メイクが先だけどね」

私なんかが着てしまってもいいのだろうか。絶対に衣装が汚れて見えるんだろうな。

そう思いながら、マネに促され、私はメイクをされた。

珍しく化粧台には鏡がついていないので、私はメイクで変わる自分の顔を見ることができなかった。

メイクと同時にテレビについての説明があった。どうやら私がお姫様になると公開されるようだ。

こんな重役、私なんかに務まるのかな。不安でいっぱいだ。

「メイク終わりました。では、次は衣装ですね。何か着てみたい衣装はありますか?」

そんな中、五分もしないうちにメイクが終わったらしく、衣装選びが始まった。

正直、たくさんありすぎてどれを着てみたいのかがわからなかった。

「すみません。私、どれを着たいって言うのがないので、お手数だと思いますが、マネさんが選んでくれませんか?」

「あ、え、私ですか?……やめた方がいいですよ。私、メイク以外の美術センスに欠けてて、以前にスタライの衣装選ばさせてもらった時にはダメ出しくらいましたから」

スタライとは、STAR LIGHT NIGHT の略で、裏方ではこの呼び方が一般的なんだとか。

だったらファンもスタライでいいのに、何でわざわざ三ツ星様とか新しい呼び方作っちゃうんだか。

……それにしても、メイク以外の美術センスがないってどう言うことだ。

メイクの方が大丈夫か心配になってきた。

「あの、一回鏡を見てみてもいいですか?今のメイクを見て衣装も選びたくて…」

「あぁ、もちろんです!こっちに来てください」

そう言って案内されたのは、よくお店で試着するときに使うような場所だった。

「すみません。この部屋には鏡はここにしかなくて……」

そんな言葉は全く耳に入らなかった。……この人、本当に美術センスがないのだろうか。

メイクだけで見てみると、めっちゃ上手だった。私だと言う面影をちゃんと残しつつも、可愛く見せている。

「あ、あの!このメイク、とっても上手ですね!私、こんなに可愛くないのにすごいです!」

「あ、え、そうですか?ありがとうございます!でも、元々あなたはとても可愛い顔をしていたので、少し手を加えるだけだったんですよ?…喜んで貰えたなら、良かったです!」

あ、あははは。私が可愛いと言うのはお世辞だなぁ。
< 10 / 59 >

この作品をシェア

pagetop