キミには一番星を
それは、オレンジ色で統一されたスーツの形に似たドレスのような衣装だった。
スカートに少しだけフリルがついているだけで、あとはシンプルなデザインだった。
オレンジと言っても濃すぎない色で、暖かい春の日差しに包まれているような気分になる。
私が着るのはもったいないとは思うけど、でも、あの二着よりは私に合うような気がした。
「おい、めっちゃ良いの選ぶじゃねぇか!神矢、お前やるな!」
「うん。僕もこの衣装が一番奏ちゃんに似合うと思う!」
「私も、美術センスはないけれど、この衣装に何か惹かれるものがあります」
「へへへ、そうでしょ?俺らのメンバーカラーにも被らないし、これは自慢の一着だな。…俺が作ったわけではないけどね」
みんなしてそんなに褒めると、私が着づらくなるじゃんか。
「ねぇ、奏サン♪この衣装を一回着てみてよ」
私は頷いた後、あの試着室で着替えた。
「ど、どうかな?」
私が鏡で見たときは、まぁ、なかなか似合っていたとは思う。
でも、やっぱ私なんかがこんなに良い衣装を着ても良いのかな。不安はまだ消えたわけじゃない。
「「「「良いと思う!!!」」」」
……意外にも良さげな反応が返ってきてホッとする。でも、いくら何でも声を揃えすぎでは?
その後も、
「え、可愛すぎなんですけど?奏サンがマジで俺らのお姫様で良かった」
「こんなに可愛い子がいるならもっと早くに見つけたかったな。僕、もう、他の女の子のこと見れない」
「俺、もう、可愛すぎてテレビに映させたくねぇわ」
「私、こんなに可愛い子、初めて見ました。良い子見つけちゃいましたね……」
などなど、様々な称賛の声をいただいた。流石に耐えきれなくて、私は声を上げる。
「あ、あのぉ、時間って大丈夫なんですか?」
そんな私の声に、四人ともが一斉に「「「「やばっ!」」」」と叫んだ。
そこからは私も大変だった。ちなみに、グループ名にちなんでお姫様は織姫と呼ぶようにしているらしい。
そこで、早速私は織姫と呼ばれるようになった。まだ違和感はあるけど、セリフも考えなくちゃいけない。
何でこんなにキツキツのスケジュールなのか、マネに聞くと
「スタライがテレビに向かって公表しちゃってからいきなり仕事が来て、テレビが観にくるそのステージで一緒に姫も出ることになっちゃったんです。それでこんなに忙しく……」