キミには一番星を
 学校のチャイムが鳴り響く。

そして私は今からこの高校に入学する。

「入学生代表、神矢星一(かみやせいいち)

「はい」

神矢星一と呼ばれた男子生徒がステージに上がってスピーチを始めた。

本当は静かに聞いていなければいけないはずなのだけれど、なぜかみんながコソコソと話している。

内容が気にならないはずがない。私はこそっと聞き耳を立てた。

「神矢様って、あの神矢様?」

あの、って何だ。しかも様、までついている。

「アイドル、STAR LIGHT NIGHT の神矢様でしょう?」

アイドル?STAR LIGHT NIGHT?なんだそれ、これはややこしい事になってきたぞ。

そんな彼は何食わぬ顔で言葉を続けている。

…どうやらヤバい所に来てしまったかもしれない。



入学式が終わり、各自の教室にそれぞれ移動する。

ここでも問題が起きた。私のクラスがどうやら異常らしい。

…特に女の子達の列ができている。

だって、あの?神矢様がこの教室にいらっしゃるんだもん。

てか、さっきから神矢様以外にも何回も聞こえてくる名前があった。

「キャー!星川(ほしかわ)様!なんともまぁ愛くるしいお顔をしていらっしゃる!」

「星川様可愛い!!そこら辺の女子よりも可愛いですわ!」

「何言ってるの!舟星(ふなほし)様の方がかっこいいでしょう!」

「そうよ!あ!舟星様がこっち向いてくれたわ!もう、心臓が持たない」

この世界は嫌だな。だって、口調からしてお嬢様ばかりでしょ?無理無理無理。

「本当に今年のクラス替えはおかしいわ!なんでA組に三ツ星様達が集まっているのよ!」

「本当よ!中学の時は三ツ星様達が一つの教室に集まることなんて無かったわよ!」

ブーブ言ってるな。あー怖い怖い。お嬢様ってこういう所があるよねー。

結構、高校選び間違えた感じだ。早くこんな高校から卒業したい。

その後の朝の挨拶、自己紹介も女子達の黄色い声が絶えることはなかった。

本当に疲れる。疲れた。家に帰って勉強もしないといけないのに最悪だ。

精神から疲れるって重症だと思う。

でも、一つだけ嬉しい事があった。

「やっほー、(そう)!今日は朝からうるさかったよねー。心底ウンザリしたよ」

「うん。私も!流石に疲れちゃったよ」

そう、なんと、友達ができたのだ!しかも他のお嬢様よりは全然サバサバしてて話しやすい。

そんな私、星木(ほしき)奏はとりあえず、この高校でも生きてはいけそうです。


……なんて、思ってた自分がバカだった。


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