キミには一番星を
奏でる者は楽しむ者




 練習が大詰めになってきた頃、今日、久しぶりに学校に行ったら優里香に抱きしめられた。

「わ、優里香?どうしたの?」

懐かしい香水の匂いが鼻を掠めて、思わず私も抱きしめ返した。

「だって、奏は一週間も学校休んでたんだもん。私、奏の他に友達いないから久しぶりに会えて嬉しいの」

へへ、照れちゃうなぁ。私だって、仕事の関係で忙しくても、優里香のことを忘れてはいなかった。

それどころか、今何してるのかな?元気かな?と思い出してばかりいた。

正直、練習は楽しいけど、優里香に会えなくて私も寂しかった。

「朝からお熱いね、二人とも」

そんな声が聞こえてきて、優里香は思い切り肩を震わせた。私はもう、聞き慣れた声に驚くことはない。

「星一達も今日、学校来れたんだね」

「逆に、俺らは奏よりも学校に行けているよ?奏は最近忙しそうだね」

「うん。でも、楽しいからいくらでも頑張れる!」

すると、後ろから優雨がひょっこりと顔を出した。

「神矢くんとばかり話しててずるいなー。僕とも話そ?」

さらにその背後には、七生が何やらニヤニヤと私たち四人を見下ろしていた。

優里香は、突然の三ツ星登場に、結構ビビっていた。それは仕方のない事だと思う。

何せ、お嬢様たちの視線はまだまだ険しいから。

私だけなら良いけど、優里香まで巻き込んでしまっているのは申し訳ない。

「私、久しぶりに優里香と二人きりで話したいんだ。だから、ごめん!」

「うんうん。そうだよね!じゃあ、僕たちとはまた放課後に会おうね?」

私が頷くと、彼らは教室の中央で何やら会話をし始めた。たまにお嬢様が群がっていたけど、付かず離れずって感じだ。

「奏、本当に違う世界の人になっちゃったね。私、もう奏と肩を並べて歩けないかも」

「私なんてまだまだ全然だよ。それに、私からしたら優里香の方が羨ましいかも。だって、こんなに可愛いんだもん♪」

私がそう言って抱きつくと、優里香は呆れた顔で「はいはい」と言いながら私を引き剥がした。

こう言うところも、優里香の好きなところだ。サバサバしてて話しやすい。

「私、優里香と友達になれて本当に良かった!」

この言葉に、私の友達は少し照れながら「私も」と言ってくれたんだ。
< 23 / 59 >

この作品をシェア

pagetop