キミには一番星を




 最初にまずは一曲披露する。これは今までスタライがライブに披露したことのあるパフォーマンスだ。

だけど、今回は私がいる。私が歌うのはファンのみんなも歌えるところだ。だから、この曲での私の出番は少ない。

…ダンスはさせて貰っているけれど。だから、私は間違えることなんて出来ない。


そのまま一曲目が終わり、自己紹介の時間を挟む。今回は私の自己紹介がメインだ。

まだ緊張は残っているけど、一曲目でだいぶ落ち着いてきた。

「改めまして、スタライの織姫になりました。星木奏です!今までたくさん練習をしてきたので、どうか応援をよろしくお願いします!私は三ツ星に比べたらまだまだだけど、みんなを楽しませられるように頑張ります!」

あ、やっぱりだ。ステージの上から見える景色はすごく輝いている。スポットライトのせいじゃない。

ペンライトのせいでもない。夜空に輝く満点の星空のようなライブ会場に、目がキラキラしてしまう。

その後もちょっとした雑談を挟みながら、何曲も披露していく。

そして、三ツ星だけのパフォーマンスの番が来た。そこで一回、私は舞台袖へ移動する。

ささっと水分補給をすると、新しい衣装へと着替える。そして、汗拭きシートも忘れない(笑)

端っこから見る彼らは、やっぱり眩しくて、思わず口角が上がってしまう。

こんな彼らと同じグループで活動できること、本当に誇らしく思う。

私が加入しても、スタライの人気は落ちなかった。それに私はどれだけ救われただろう。

「奏ちゃん、そろそろだよ!頑張ってね!みんなからのお墨付きの曲でみんなを虜にしちゃって?」

「へへ、はい!」

みんなに聞こえないように、小さな声でやりとりした私たちは、ほぼ同時に三ツ星を眺める。

「みんな、ここまで聴いてくれてありがとね?僕、嬉しいよ!」

「じゃあ、お次は織姫のオリ曲を織姫に披露してもらうぜ!」

……相変わらず七生はややこしい言い方をする者だ。でも、それも愛おしいけどね。

「みんなで呼ぼっか!せ〜の!」

「「「織姫〜」」」「そ〜う!」

ぷっあはははは!星一だけ私のこと奏って呼んじゃってるの、マイクが拾ってるよ。

みんなは織姫って呼んだのに。……でも、正直、緊張はしていたから勇気を貰えた。

私はこっそり笑ってから、足を一歩一歩踏み出す。

「私はこれから、私だけのオリ曲を披露します!みんなへの感謝の気持ちを込めて歌います!」

ここで今までカラフルだったペンライトが、全部オレンジ色に染まった。全部、私の色で満たされているんだ。
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