キミには一番星を



「それじゃあ、いっきまーす!」

今、この観客の中にいる優里香、舞台袖にいる三ツ星と舞さん、そしてスタライを応援してくれるみんな。

全員に感謝の気持ちを伝える。その手段は、私は音楽だった。

歌詞に全てを込めて、私の精一杯で歌う。

「自信がなかった私のこと、輝かせてくれたのは君でした。

向日葵のように陽を受けて、まっすぐな君の眼に、勇気を貰えたんだ」

一つ一つの言葉に、今までの想い出を載せる。音楽で伝える。

「君を導く一番星にはなれなくてもいい。大切な人ほど近くにはいないんだろう。

それでも、それでも、手をかざしてみれば、光が心に宿った。笑ってね」

観客のみんなは、私の歌を、ダンスを聴いてくれている。きっと、見えないけど、優里香も見てる。

舞台袖には大好きな仲間がいる。私は、

「一人じゃないから頑張れるんだ。大好きだよ。大好きだよ!君のその表情、全部が宝物なんだ。

届かない遠くに、待っているものが、道導だと信じて。ありがとう」






「聴いてくれて、ありがとうございました!」

私が頭を下げると、拍手が鳴り響いた。近くにいる人の中で、泣いてくれている人までいた。

すると、一人ペンライトをブンブン振っている人が目に入った。よくよく見てみれば、私の友達の優里香だった。

私は、そんな彼女に向けてハートを作ってファンサというやつをやってみた。

「…じゃあ、次はお待ちかねの三ツ星によるパフォーマンスのです!新曲を披露するんだって!楽しみだね!」

三ツ星って、みんなが思う以上に頑張ってるんだよ?私、そばで見ていたから分かる。

何でも簡単にこなす人たちだと思ってたけど、たくさん努力を積み重ねてきてたんだ。

「一緒に三ツ星って呼んでみよう!せ〜の!」

「「三ツ星〜!」」「みんな〜!」

へへへ、星一が一人だけ呼び方が違ったように、私も変えてみた。

そんな大好きな三ツ星は、衣装と髪型を変えていた。やっぱカッコいいなぁ。

「ヤッホー!俺らの奏の曲、どうだった?」

「「「めちゃ良かった!」」」「「「泣けた」」」

わ、みんな、ありがとう!舞台袖に移動した私は、少しだけ泣きそうになった。

「奏の次にやるのはハードルが高いけど、俺らの新曲も聴いてね!」

ちょっとくすぐったいな。星一は、ライブだろうと何だろうと私のこと、織姫ではなく奏と名前で呼んでくれている。

「あ、奏ちゃん、口角めっちゃ上がってる!」

「え、な」

……バレちゃったか。でも、別にいいや。だって、嬉しかったんだもん。我慢はしなくても良いよね。
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