キミには一番星を
私の頑張りなんてたかがしれている。今までどれだけ三ツ星が頑張ってきたことか。
私には想像できないくらい、厳しい練習をしてきたんだと思う。本当は私が混ざってはいけないのだ。
「そんな事ないと思うよ?奏が織姫になってからもスタライの人気はグングン伸びてる。奏のおかげで男子ファンも多くなってきてるんだよ。もちろん女子もね?だから、そんなに自分のこと低く考えたらダメだよ」
「うぅ、優里香様、そんなに温かい言葉をくれてありがとうございます」
「バァーカ、奏様の方がみんなの憧れの的だよ?」
持つべきものは友達だって、いつかに誰かが言っていたのを思い出した。
歌で感謝の気持ちをたくさんの人に届けることができて、本当に良かった。
優里香との会話が終わり、私は事務所に直行した。これは舞さんと打ち合わせしていた。
これから打ち上げを事務所でするんだって!
私が混ざることに、私自身が抵抗があるけど、みんなの厚意をありがたく受け取ることにする。
「ただいま〜!」
もうすっかり我が家のような事務所が、私は大好きだ。
「「「「おかえり!」」」」
迎えてくれるみんなにも、感謝の気持ちが届いていたら良いな。
「スタライはみんな未成年なんだよね?」
「「「「そうです」」」」
私たちの返答に、知っているはずの舞さんは落ち込んだ。
「他のマネは色々忙しくて、私しか打ち上げに参加できないんだ。ってことはさ、私しかお酒飲めないってことじゃん?」
「舞さんて何歳なんですか?」
失礼だとは思ったけど、興味には勝てなかった。
「私は、ぶっちゃけのところ、二十六歳で〜す!ヤバくない?後少しで三十だよ?青春の時代よ戻ってこーい!」
はは、舞さんって本当に良い人だし面白なぁ。みんなが笑っているこの雰囲気を舞さんが作ったんだ。
でも、少し前に舞さんから
「私、高校と大学時代は男子が苦手だったんだ。必要最低限以外、男子と喋ったことなかったんだ」
との話を聞いた。それが嘘かのように、今では男性とも話せている。しかも、どこか楽しそうに。
「舞さんて、誰か好きな人とか出来たことあるんですか?今ではこんなに異性とも話せているから、何かきっかけがあると思って……」
「…鋭いね。好きではなかったけど、憧れの人ならいたかな。その人は友達の彼氏の先輩だったんだ」
昔のことを思い出しているであろう舞さんの表情は掴みどころがなかった。
ただただ嬉しい、楽しい記憶ではなさそうで、少し申し訳なくなった。