キミには一番星を
一緒に過ごすうちに、彼の名前を知った。自己紹介をしなかったのか、と思うかもだけど、僕は自分から出来なかった。
それに、彼の方からも自己紹介をしてくれなかった。
僕を救ってくれた男の子の名前は、神矢星一と言った。
僕の苗字にも星がついていたから何となく親近感が湧いたのを覚えている。
そして、神矢くんのそばにいると、いじめにも遭わなかったし女の子との関わりも減った。
神矢くんに周りの女の子達と関わりが増えそうだとも思ったけど、そんなことはなかった。
神矢くんは気を遣ってくれているっぽかった。
「神矢くん、もう、僕と関わらなくても良いよ?女の子達も神矢くんと一緒にいたいだろうし、神矢くんもその方が楽しいでしょ?それに、僕は神矢くんのそばにいる資格なんてないから」
僕は一度、神矢くんから離れようとした。授業が終わるたびに僕の教室まで来てくれているのも申し訳なかった。
そして、いつか裏切られてしまうのが、怖かった。裏切られるより、自分から離れた方がマシだから。
「それ、本気で言ってるの?俺、女子といたって楽しくない。優雨といた方が楽しい!女子よけにもなるし?」
ははは、と乾いた笑い声を響かせる神矢くんは、僕にとって恩人であり、唯一の信頼できる人だった。
「僕、今、神矢くんと一緒にいられる代わりに、何か恩返しができるように頑張る!」
「え?良いよそんなの。俺が一緒に居たくて優雨の側にいるだけだから」
それからも、神矢くんと一緒にいる時間は楽しくって仕方がなかった。
もう、いじめられていた記憶なんて頭の片隅に追いやられていた。僕は幸せだった。
そのまま、色々あって七生も加わり、三人で行動することが多くなった。
そんなある時、外出していた僕たちにある一人の男の人が近づいてきた。
「君たち、アイドルの道に進んでみないか?」
それは事務所の人で、僕たちはスカウトされたんだ。僕たちにとって恩人である神矢くんに判断を任せた。
彼は僕たちのことを見てから、一人頷き、事務所の人にこう言った。
「アイドルをやらせてください!俺らに、輝くステージをください!」
正直、アイドルって女の子がキャーキャー騒いでそうで好きではない。
でも、神矢くんがやりたいなら、僕はどこまでもついていく。それに、苦手の克服も大事だと思った。
そこで、しばらく経ったある日、僕たちの運命を良い方向へ向かわせる女の子と出会ったんだ。