キミには一番星を

七生side




 今日は少し小さなライブをする日。この約二ヶ月半後には東京ドームが待っている。

忙しくない、と言ったら嘘だけど、比較的マシな方だった。

それでも、一つ一つを大事にして活動する。恩人である神矢を、世界一のアイドルにするって決めたんだ。

「なぁ神矢!今日のライブ、前回よりも雑談の時間多めだったよな?打ち合わせしていた通りに進まなかったらどうする?アドリブで雑談するか?」

「あー、そうだね。もしも時間が余ったらファンサタイムにでもしようかな。時間が押したら雑談の時間を切り上げる」

「了解!みんな聞いてたか?」

「「うん!」」

こうやって、もしものことを考えて動くのが俺の癖。

……小さい頃からこうやって生きてきたから、なかなか直すことができないんだ。



 俺の父親が病気を患っていて、小学五年からは母が働きに出るようになった。

病院にお見舞いに行くたびに、父は「俺のせいでごめんな」と謝っていた。

俺は「父さんのせいじゃないから。父さんは頑張って病気と戦ってよ」と毎回言う羽目になっていた。

でも、別に嫌とかめんどくさいわけでは無かった。

ただ、そんなこと言われた後にどんな顔をして良いのかが分からなかったんだ。

弟がいるから、家事の手伝いをしないといけなくて学校の友達とは遊べなくなった。

悲しくはなかったけど、俺のことを見捨てるんじゃないかといつも不安だった。

そのまま中学生になった俺は、できるだけ友達を作らずに生活していた。

小学校からの友達は、みんな中学生になったことをきっかけに離れていった。

心の中では予想していたことだったから、今更悲しくはなかったけど、それでも少し堪えた。


……そして、中学二年の夏、父親が亡くなった。二度と帰らぬ人となってしまった。

俺は、泣いた。一週間ほど学校を休んでいる間、誰にもみられないように泣いた。

お葬式の時だけは我慢したけど、それからはダメだった。でも、俺には弟がいる。

兄がこんなんじゃダメだと思った。ただでさえ母も泣いて、憔悴しきっていたのに、俺まで泣いたら家族が駄目になる。

そう思ったから、家族の前では明るく振る舞った。……母には悲しくないの?と聞かれたけど、俺は答えなかった。

それからが大変だった。母には人間の心を持っていない、と思われて避けられた。

それに気付いた弟も、俺を避けるようになった。母も弟と会わせようとしなかった。





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