キミには一番星を
とうとう、俺の心が崩れかけていた。なんとか歯を食い縛って生きてきた。
俺に救いの手が差し伸ばされたのは、中学二年の後期辺りだった。
「ねぇ、君、女子に密かにかっこいいと言われてモテてるんだって。知ってた?」
何だコイツ。俺に喋りかけて来たと思ったら、俺がモテてるとか言い出しやがった。
初めの印象はチャラ男、だった。よくよく見ると、後ろにやや隠れ気味に大人しそうな男子がいた。
正反対そうな二人が何で一緒にいるのかが分からなかった。
「君、なんか暗いね?……モテてること知らなかったっぽいし」
「……」
「君、お父さんを亡くしてしまったんだって?生活はどう?家族はみんな、君の味方?」
……何でコイツが俺の事情を知ってるんだ。誰にも家族のこと話してないのに。
「お前に話すことなんてない。じゃ、これで」
そう言って立ち去ろうとした時、チャラ男じゃない方の、大人しそうな男子が声を上げた。
「ね、ねぇ!あのさ、僕たちと友達に、なってくれないかな?」
何がどうなってそんな話が出てくるんだ。もしかして俺をからかってるのか?
でも、俺の家の事情を知っていたことに関しては謎だ。
大人しそうな奴がチャラ男と一緒に行動しているからと言って、二人のことを信用した訳ではなかった。
ただ、色々と探ってみる、それだけの意図だった。
「よく分からないけど、友達になるくらいならいいけど?」
これが、俺の生活を鮮やかにしてくれるとは想像もしていなかった。
ある程度、表面上では仲良く出来始めた時、俺は頃合いだと思ってずっと気になっていたことを聞いてみた。
「あのさ、俺に初めて声をかけた時、どうして俺の家族のこと知ってたんだ?」
答えてはくれないだろう、と思っていたから、チャラ男が口を開いた時は少し驚いた。
「実はね、君からはただならぬ雰囲気を感じてて、気になって君の苗字を調べてたんだ」
これを聞いたほとんどの人は、何かしら怖い存在だと思うかもしれない。
でも、大人しそうな奴が発した言葉に、俺は納得した。
「僕、帰り道に君を見かけた時があったんだ。それで、君と同じ帰り道だってことが分かった。その時に、君は家に入るのが見えちゃったんだ。その家の表札が “舟星” だった」
「んで、たまたま俺のこと気になってたそいつに俺の苗字を教えたと」
「う、うん。でね、小学生の時の君の友達に君がどんな人だったか聞いてみた」
……それで俺の父親が病気だったと知って、俺の表情がさらに暗くなったことから、俺の父が亡くなったことが分かったと言うことか。