キミには一番星を

「塞いで見えないものには、君の眼が光った。俺らのリスタートは遠くまで、突き抜ける影が伸びていく」

ここは星一のパート。サビに入る前の盛り上がる部分で少しクレッシェンドをかける。





「「「「ついて来てくれて、ありがとう」」」」

最後はみんなで声を揃えて歌う。これは一番伝えたいことだ。だから、最大限の想いを込めて歌った。

そして、みんなで集まりポーズをとって終了だ。


ーみんなが一等星のように輝いていた。


 パフォーマンスが終わり、ちょっとした雑談で最後を締めくくる。

ファンサタイムも忘れない。今回はあらかじめにアンケートを取っていた。

スタライにどんなファンサをして欲しいのか、事前に聞いておいたのだ。

それで多かったものや珍しいものを選んだ。

ハート、バーン、猫や犬の鳴き真似。甘い言葉にバク転。……バク転に関しては七生と星一しかできない。

それはファンの子も知っているようだった。でも、これらよりもヤバかったのは……

「奏姫、失礼させてもらいますね」

そう言った星一は、私をお姫様抱っこしたのだ。会場が女子の黄色い声に包まれる。

私、これ知らないんだけど。打ち合わせはこんなことしなかったし、聞いてもないんだけど?

それは二人も一緒だったみたいで、優雨も七生もあんぐりと口を開けている。

アイドルがこんな顔をしたらダメだって……とか思ってた私は、徐々に現実を理解し始めていた。

そして、私の頬も赤くなり、心臓が不規則に音を立て始めた。

「奏、いつも可愛いね♪…姫は世界一可愛らしいですね。俺、惚れちゃいました」

なななななななななななななななななななななななななななな?!?!

また会場が騒がしくなる。二人は、今度は楽しそうな笑っている。

ちょっと待って!いやいやいや、でも、わたしはあくまでファンの子の代わりであって、人形だ。

自分にそう言い聞かせるけれど、なかなかこのドキドキは収まらない。

「ちょっと、な、長いって!そろそろ降ろして……」

私がこそっと星一に言えば、こそっと

「そこはお姫様の口調で言うんだよ。ファンサタイムなんだから」

と返された。お姫様って、お嬢様ってことで良いんだっけ?まぁ、なんとかなるか!

「あの、そろそろ降ろしてもらえませんか?心臓がもたないです……」

お姫様の口調って言われても、オホホホホとか、ですわとか言うイメージもそこまでなかった。

だから、それっぽい雰囲気を出しつつ、丁寧語で星一に伝えた。
< 38 / 59 >

この作品をシェア

pagetop