キミには一番星を
「分かりました。足元にはご注意下さい」
私はやっとで、星一のお姫様抱っこから逃れることが出来た。それでも心臓は落ち着きがなかった。
その後は星一だけじゃなく、七生や優雨までもが私で遊び始めた。
正面からのハグにバックハグ。恋人繋ぎに、頭ポンポンなど、いろいろなことをされた。
終わる時間になったので、みんなで一言ずつコメントを言って今日のコンサートを終えた。
「みんなして私をからかって、酷い。酷すぎる!もう絶対に許さないもん!」
私の心臓はようやく落ち着きを取り戻し、冷静に物事を考えれるようになった。
あの後、舞さん含めた関係者の人も笑っていたと言う事実を知った私は、誰のことも信じられなくなって来た。
「奏ちゃん、ごめんね?でも、やり始めたのは神矢くんだよ。僕たちだって最初はどうすれば良いのか分からなかったよ」
「そうそう。神矢が急に打ち合わせをしてない事やり出して、俺らも困ったんだ」
「……その割には、優雨も七生も楽しそうに笑ってた。言い訳にしか聞こえないんだけど」
私、危うく勘違いしそうになっちゃったんだ。そんな訳ないのに、あるはずのない感情を認めるところだった。
……私が星一のことを好きだって、勘違いしそうになった。好きになっちゃダメなのに、そんな資格なんてないのに。
それに、もしも付き合ったとばれたら、マスコミにバラされてファンからブーイングされるに違いない。
しかも、この行為はスタライの人気を落とすことにも繋がってしまう。それは避けなければいけない。
せっかく、みんなでここまで来ていたのに、私が余計なことをして壊したくない。
「奏、ごめん。でも、悪気はなかったんだ。それに、ファンからのアンケートに書いてあったんだよ?これも立派なファンサだったんだ。だから、どうか許してほしい!」
「だからと言って、なんで打ち合わせにないことをした訳?」
「う、それ、は……答えられないや。…ごめん。でも、いつかは必ず……」
最後の方は何を言っているのか聞き取れなかった。急にボソボソと話し出した星一は、どこか悲しそうな顔をしていた。
私、言い過ぎちゃったかな?で、でも、悪いのはみんなじゃん?
はぁ、もう良いや。とにかく、コンサートは成功したんだし!(?)
これで明日からはしばらくゆっくり休めそうだな〜。
ーそう思った私は、裏切られることなるとは知らなかった。