キミには一番星を

星一side



 はぁ、もうダメだ。認めるしかなさそうだ。

ファンサを口実に奏をお姫様抱っこしたり、バックハグしたりしてみたけど、やっぱ俺は奏のことが好きらしい。

優雨や七生が奏のことを抱きしめた時、俺はどうしようもないくらいにモヤモヤしていた。

俺だけのものにしたいと、心から思ったんだ。もっと奏と一緒にいたい。



「神矢くんどうしたの?なんか、最近元気ないね?」

……あったりまえだ。だって、俺が奏に近づけば避けられるのだ。傷つかないはずがないでしょ?

それは俺だけじゃなく、優雨も七生も避けられているらしい。

話すだけなら大丈夫だけど顔を覗き込んで見たとき、奏が落としたものを渡すときにたまたま手が触れたときに極端に避けられるのだ。

……もしかしたら、俺は奏に嫌われたかも知れない。

「おいおい、そんなにため息ばっかついてんなって!神矢らしくないぞ?」

俺らしく、かぁ。そんなの、俺にはないのに。みんな知らないからなぁ、俺の過去。無理もないか。

「ごめん。俺、頭痛くなってきた。保健室で休んでくるわ」

俺はこの場から逃げるように、保健室に駆け込んだ。ぶっちゃけ、頭なんて痛くない。

ただ、昔のことを思い出してしまっただけ。みんなの前で取り繕えるかが不安だっただけだ。

今では思い出すことなんて、滅多になかったんだけどなぁ。







 それは、幼稚園児だった頃のハナシ。

俺は、当時は自分のことをボク、と呼んでいた。それはそれは、内気な少年だった。

ずっと部屋で折り紙をするような生活をしていたボクは、あるとき、テレビであるものを目撃した。

それは、アイドルだった。(男性の方の)

自分はなれないと思ってたから、ボクはいつもテレビで眺めているだけだった。

そこでたくさんの歌と関わるようにもなった。言葉の意味を全部理解するのは、当時は難しかった。

まだ五歳くらいの時の話だから。でも、リズムや間奏の音を聴くだけでも、ボクの心はいつも満たされた。

……小一になるまでは。

ボクが親に「このグループのグッズが欲しい」とねだったのが良くなかったのだ。
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