キミには一番星を


 アイドルなんて口にすれば、そりゃあ怒られた。だから、口にすることは無くなった。

音楽もなかなか聴かせてもらえずに、一気に心の中が空っぽになったかのようだった。

……ボクの親は、音楽が嫌いなようだった。

両親共々、大学時代に音楽を嫌いになる出来事があったそうだ。父さんに少しだけ教えてもらった。

母さんの方が音楽が嫌いなようで、言われてみれば音楽番組なんて見たことがなかった気がする。

ボクがアイドルを知ったのはCMだったし、テレビも両親にはバレないようにしてたから。

ボクはそれから、学校で友達を作ろうと思った。この心の穴を少しでも埋めるために。

それに、そろそろ折り紙にも飽きてきた。

もしも今後、あのアイドルと会った時に役立つようにコミュニケーション能力をつけておこうとも思った。

それから学校で少しずつ人と話すようになった時、ボクはあることに気がついた。

男の子は、ほとんどが自分のことを「オレ」と呼んでいた。

……学校で「ボク」と言わないように、家で慣れておこうと思った。

だから、父さんや母さんの前でも「オレ」と言うようにしていた。

まぁ、これも母さんを怒らせてしまったのだけれど。

だから家では常に「ボク」で、学校では「オレ」と使い分けていた。めんどくさかったけど、しょうがなかった。

…呼び方を俺、に変えてから、格段に男友達が増えた。ちなみに、ボク呼びしてた頃は女子の友達の方が多かった。

こんなんだから、沢山の人には好かれるようになった。遊びにも誘われ、寂しさも随分と紛れた。

男友達と遊ぶようになって体力がグングンついていった。

また、家にいる時は出来るだけ両親と顔を合わせたくなかったから、結構部屋にこもって勉強をしていた。

って感じで、俺は文武両道になったわけで、女子にもモテるようになった。

小学三年の時に初めて告白された。YESと答えるか正直迷ったけど、当時の俺はまだ心は清かった。

その女子にはNOと答えた。

「ただの友達だと思ってたし、まだ俺には人を好きになる気持ちが分からないから、中途半端な気持ちで付き合いたくない」

と、丁寧に断った。まぁ、これが長く続くわけじゃなかったけど。
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