キミには一番星を
その時、チャイムが鳴ってしまった。俺らはもう、ここにいるしかない。今更遅刻してまで参加したくない。
かといって、二人きりって……
「はは、星一、すごい顔してる。すごく嫌そう」
「……二人きりなのが嫌なんだよ。奏って都合のいい人間だね?」
「それを言うなら星一もだよ。……そりゃあ、私が避けちゃったのが悪いんだけどさぁ」
「……自覚しているようで何よりです。ってことで、俺寝るわ」
「はぁ?ちょ、ちょっと待ってよ!私、謝りたかったの!だからここに来たのっ」
謝りに…?俺の方こそ謝らないといけないのに、俺、超ダサいじゃん。
あ、先に謝ればいいのか?でも、どうやって?……いや、謝るんじゃないな。感謝を伝えるんだ。
「奏、スタライの織姫になってくれてありがとう。俺について来てくれて、ありがとう」
情けない俺は、奏の目をまっすぐ見て言うことはできなかった。やや俯いて、でもはっきりと伝える。
俺は仲間に恵まれた。それだけで良いよ。もう、俺の役目は終わったんだ。
俺がグループから抜けても、きっと大丈夫。三人なら上手くいけるよ。って、俺は都合の良いことを考えていた時だった。
「ばかっ!本当に、星一はバカじゃん…!」
急に叫んだと思った奏は、今度は泣き出した。俺は何をすることもなく、しばらく奏が話し出すのを待った。
「私がみんなを避けたのって、実は嫌いだからとかじゃないの。前にさ、ファンサタイムの時に抱きしめられたり…お姫様抱っこされたりした時から、変にドキドキしちゃって……」
……ねぇ、今、二人きりだよ?今の言葉を聞いた他の男なら襲ってるかもね。
ドキドキって、そういうことだよね?…まぁ、調子には乗らないけど。
「特に星一が近くにいると、心臓が騒がしくなって、いつもどうやって話してたのかが分からなくなった。指が触れただけで、前のお姫様抱っことか思い出しちゃって、顔を合わせられなくて、それで避けちゃった」
人によってドキドキの解釈の仕方がある。恋だと捉えたり、ムカついて、ってこともある。
まだ、油断は禁物だ。てか、そもそも俺には恋する資格は無いんだって。いい加減分かれよ、俺。
「私、アイドルに対してこの気持ちを抱いたら今後迷惑だろうなって考えてた。でも、もう我慢できない。このままモヤモヤするのは嫌だから」
ゆっくりと深呼吸した奏は、俺を幸せな気分にさせる言葉を言った。
「私、星一のことが好きです!」