キミには一番星を


「あの、私、星一からあなたの話は聞いてます。仕事が忙しい時に八つ当たりをしているそうですね?でも、今、私の目の前では星一と仲良さげな雰囲気を出してますよ?どう言うことですか」

できるだけ厳しめな口調を心かげて話す。今の話を聞くようだと、星一のことが大好きな母親という印象しかない。

例えみんなに過去を隠していたって、私が聞いた彼の辛さは嘘だとは思えない。

「…あぁ、私もそれは自覚してたわ。仕事は忙しいし、友達には裏切られるし、夫には逃げられるし、私は自分のことで精一杯だったのよ。でも、夫が逃げたことに関しては私が悪かったとは思ってる。流石に家庭を放置しすぎた。荒れすぎた」

え、すんなり吐き出し始めた。私の予想はずっとごまかすか、良いから出て行きなさい!と追い出されるかだった。

でも、落ち着いて本当のことを話しているように見える。

「私もね、ふふ、実は推しが出来てから生活を見直すようにしたのよ?だから、星一に聞いてみれば分かると思うけど、最近は八つ当たりや怒鳴ることもないの♪でね、私の推しの話をしても良いかしら?」

「あ、はい……」

「私の推しは、あなたなのよ?スタライの織姫である奏様なの♪」

「あ、そうなんですか!ありがとうござ……って、え、えぇ?!」

なんだか変な展開になってきた気がする……まさかのまさかだ。私のファンだったんだ……

気が一気に抜けた。でも、そうなら前世はどうなるんだろう?きっと前世でも私のファンになったのであろう。

何がどうなって、今みたいに星一のお母さんは単純な人になったんだろう。

いや、まだ油断はできない。たまたまかもしれないから、もうしばらくは様子見だ。

「私、つい最近あなたのことを知ったのよ。優雨くんと七生くんが家に来てくれてね、あなたのことを教えてくれたの。性格が良いうえに顔も可愛い。それに何より、歌もダンスも上手なんだもの。推しにならないはずが無いわ」

「それを言うなら星一もですよ。運動神経も頭も良いし、イケメンで歌も上手い。男女問わず人気が高いんですよ?」

それからそれぞれの推しの良いところを語り合って、私は星一の家を後にした。

去り際にさらっと、私は一言だけ話した。

「私の大切な星一のこと、どうか大切にしてあげてください!」


 その時の星一のお母さんは、今日見てきた表情の中で一番優しい目をしていた。

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