キミには一番星を
ただ、神矢さんだけがよく分からない。自分を偽ってはいなさそうだけど、特徴が掴めない。
身長はほぼ星川さんと同じくらいで、声は透き通っていると思う。でも、個性というものは感じられない。
…不思議なメンツのアイドルだなぁ。しかも、三人ともが同じ高校にいて同じクラスで同じ班だなんて。
まぁ、私は彼らのペースに呑まれかけているんだけど。
「まぁ、とにかく、ほうれん草ゲームは公の場ではやらない方がいいと思います!」
そう言うだけ言って、私はトイレへと逃げ込んだ。
……最悪だ。トイレはトイレで最悪だ。もう、女子は女子でめんどくさいよ〜。
お嬢様達、本当に怖いです。どこぞのヤンキーよりも怖いです。
ーそれは、私が個室に入った時だった。
「ねぇ、最近ある小娘が三ツ星様の周りでうるさいんですわよ?調子に乗ってるのかしら?」
「あの優里香お嬢に関してはまだ信用出来ますわ。だって、男嫌いで有名ですからね。あの人はただ、小娘と仲が良いだけっぽいですわ。少々態度は気に食わないけれど」
うわぁ、相当やばそうだな。てか、本当に優里香って男の人が嫌いなんだ。…噂されるほどに。
てかてか、私って小娘呼びされている?!……そりゃあ、お嬢様でもないし、一般人なんですけどね。
この高校には半分お嬢、半分アイドルなどの芸能人で構成されているのに、たった一人だけ凡人が混ざっている。
それが私だ。しかも、将来に芸能系の道に進むことは考えてすらいない。
ただ、何となくの勘で、良さげかもと思ったここに入学したんだ。我ながら後悔はしている。
そこで、私は爆弾発言を耳にしてしまったのである。
「小娘の名前は確か、ゾウでしたっけ?」
いやいやいや、流石に酷すぎでしょ!そもそも、ゾウが可哀想なんですけど?
吹き出しそうになって危なかった。ここにいるとバレたら、お嬢様は私を潰しに来るだろう。
「おほほほほ、ゾウって。…名前は奏とか言ってましたわよ」
「あの子、何か得意なことや注目されるようなことあるのかしらね。あ、もちろん三ツ星様にまとわりつく以外でよ?」
まとわりつくって言い方やだなぁ。てか、私、そんなに三ツ星さんと一緒にいないんですけど?
何ならあなた達の方がまとわりついているじゃんか。全く、お嬢様は解釈の仕方が怖い。
……しかも、いつまでも鏡の前にいるようだけど、何をしていらっしゃるのですか?
身だしなみと言っても、もう、常に完璧過ぎてトイレで頻繁に直す必要はないと思うんですけど。