キミには一番星を
女子の敵、しかもお嬢様達の敵を増やしてしまえば私は徹底的に叩かれる。
権力を使って、私はクビにされるだろう。そうなるくらいなら最初からやらなければいいのだ。
「お言葉ですが、私はお姫様に興味はありませんし、やりたくないです」
……これで諦めてもらえるかな?っと思ったけど、最初から私に道はなかった。
「奏、ごめんなんだけど、もう、三ツ星様がテレビで誰がお姫様になるか言っちゃったんだよね。流石に個人情報的に本名全部言っちゃうのはヤバいけど、下の名前だけ公表されちゃってるのよ」
「その通り。俺らには奏サンしかいないから。だから、申し訳ないけど俺らの姫になるしかないんだ。ってことで、早速ついてきてもらおうかな♪」
そう言った神矢さんは私の手を取って、無理やり学校から連れ出した。
後ろには星川さんと舟星さんもついてきている。
そのまま校門のそばまでたどり着くと、黒い高そうな車が停まっていた。
もしや、これって彼らが乗っている車だったりして?
この予感は的中し、神矢さんに乗るように促された。ドアが開くと、そこには三人ほどのマネージャーらしき人がいた。
運転席にはサングラスをかけた人がいるけれど、目を合わせようともしない。ま、それはそれでありがたいけど?
車に乗り込めば、マネージャーの中で唯一の女性方が、私に向き合ってこう言った。
「今からスタジオに直行します。そこで、あなたはメイクをしてからすぐにテレビに出ることになっていますから、協力をお願いします。詳しくはまた、メイクをする時に話させてもらいます」
「わ、分かりました。よろしくお願いします?」
私のこの言葉が合図だったかのように、車が発進した。
……今、女性マネがテレビに出るって言ってなかった?こんな私がお姫様だと知らされるのだろうか。
考えただけで気が滅入りそうだった。この先、私の運命はどうなることやら。
それから十分ほどでそのスタジオに到着した。車の中は怖いくらいに静かで、ずっとソワソワして落ち着かなかった。
中に入り、三ツ星さん達とは一回別行動になった。私はあの女性マネと一緒にメイク室に来ていた。
「わぁ、すごいっ、凄すぎる!」
メイク室は殺風景だと予想していたけどそこにはたくさんの衣装があり、ついつい目をキラキラさせてしまった。
「メイク室ってただメイクするだけじゃないんですね!こんなにたくさんの衣装もあるなんて驚きました」