恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
あれ‥‥‥‥‥‥
なんだろう‥‥‥‥あれは泣声?


一面真っ白な世界で
寝てしまっていたのか
私はゆっくりと体を起こして
辺りを見渡した


ここは……何処?


境界線すらない180度
真っ白な空間をぐるりと見渡す


「(あ………また)」



泣声……?
違う‥‥‥‥
何か叫んでるような声がする


この声‥‥知ってる‥‥‥


どっちに行っていいのか
全く分からないのに、
とにかく何処かに
行かなくてはいけないような気がする


『‥て‥』



また‥‥聞こえる


目を閉じて耳を澄ますと
だんだん聞こえてくる声が近くなる


瞳を閉じたまま
ゆっくりと声のする方に歩いていけば
またすぐにその声が消えてしまう



「(……待って、行かないで
 もう一度聞かせて)」




『日和、聞こえる?……日和!!』


いきなり届く大きな声に
瞳を開ければ、そこにも眩しくて
真っ白な世界があった


『良かった‥‥目が覚めたのね!』


「(目が‥覚めた……?)」


『先生呼んでくるから
 待ってなさいね』


………お母さんだ。
私は………なんで‥‥?


『ツッッ!!‥‥」


‥‥何‥これ
なんでこんなに体が痛いの?


動こうとすれば全身に走る激痛に
思わず叫び声をあげそうになった



『お前、階段から落ちたんだよ。
 ったく、心配させんな……
 寿命が縮んだ』


「……お兄ちゃん?」


階段から落ちたの………私が?


『全身打撲に右腕と右足複雑骨折。
 あそこの階段は只でさえ
 構内でも長い階段なのに
 運が悪ければ死んでたんだぞ!!』



お兄ちゃんが泣きそうな顔をして
目元を押さえていると
先生らしき人が来て
私のぼんやりする瞳にライトを当てた


『立花さん、分かりますか?』


えっ?


「…………たちばな‥‥さんって
 誰ですか‥それ。」


先生が目を見開いた後、
ライトを閉じて少し離れた。


『あの‥立花さんのお母さんですか?』


『は、はい』


『この患者様のお名前は
 立花 日和さんで間違えないでか?』


えっ?


立花……?


違う……私は………‥‥‥‥
あれ‥‥‥‥‥‥‥
私の名前は?



『立花 日和です!!
 間違える訳ありません!!』



ドクン
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