恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
立花 櫂 side


久しぶりに訪ねた場所の扉を
開けてもらい中に入ると
こんなに天気がいいのに
真っ暗だった。



『開けるぞ』


重いカーテンを一気に開ければ、
ソファで寝そべる相手が目を細めた



『櫂さん……』



男から見ても冷静沈着で
いつもはクールな相手が
目を虚ろにしている


原因は分かってるんだけど
どうしようもない。
俺だってツラいけど
受け入れたばかりだから‥‥


『彼女は……どうしてますか?』


『変わらないけど、落ち着いてるよ』


『そうですか………』


日和が救急車で運ばれた後
電話したら隼人は病院に
すぐ駆け付けてくれたのに、
日和が取り乱した状態のため
先生の判断で
家族以外面会謝絶となってしまった



『あのさ‥‥
 そろそろ少しずつ彩ちゃんとかにも
 会わせようと思ってるけど
 ………お前はどうしたい?』


先生に相談したら、
プレッシャーなどかけずに
短い時間会うならいいと
言ってもらえた。


自分の名前すら忘れてるくらいだ。
いきなり尾田が何を言っても
混乱して日和が傷付くだけ



『‥‥‥そんなの
 会いたいに決まってる』


その言い方が頭に来たのか
俺は尾田に馬乗りになって
胸ぐらを掴んだ



『お前は俺に日和がずっと探してた子で
 どんなことがあっても大切にするから
 会わせてくださいって
 頭下げたんじゃないのかよ!?
 記憶がなくなったって
 妹の中身は何にも変わらねぇ!
 お前がそんなんだと
 ‥‥‥アイツが戻れる場所が
 ほんとになくなるだろうが…』


日和が転校する前日、
部屋で泣いてた時に何度も謝りながら
小さい声で口にしてた相手に
やっと会わせてやれたのに…



『櫂さん……ごめん‥‥目が覚めた』


俯いた顔を上げれば、
尾田はあの時と同じ……いや、
それ以上のいい顔をしていた


『最初からそうしろ、このアホが』


立花 櫂 side 終
< 110 / 147 >

この作品をシェア

pagetop