恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
瀬木 遥 side


櫂さんから
立花が夕方中庭を散歩すると
朝早くメールが届いた


病室はまだ面会謝絶となっていて、
訪ねてもきっと断られる。


会えるチャンスだと思ったから
頼まれていたコラムや
雑誌の短編小説を急いで仕上げてきた


櫂さんにあの日
目を覚ましてもらうまでは、
よりによって自分のことを
彼女が忘れてしまったという
ショックが大き過ぎて
日和の辛さも分かってやれなかった


日和‥‥


今、君はどんな顔をしてる?


あの小さな体で
怪我の痛みに耐えてるのか?


毎日思わない日はないほど、
俺の頭はずっと変わらず
彼女でいっぱいだ


前まで1人でいた空間に
彼女が来てくれて
どんなに毎日楽しくなったか
知らないだろう?


病室からギプスを巻いた
小さな彼女が出てきた時
日和って叫びたいのをぐっと堪える


名前を呼びたい…
抱き締めたい……って


見付からないように
そっと近付いた時、膝の上に
見えた本に胸が苦しくなる


この子は本当に本が好きなんだ‥
俺も本を読んでいる君に
恋をしたからもう一度始めよう‥‥



本を落としても
一生懸命誰にも頼らず
拾おうとするところは
記憶がなくても
変わらないみたいだ。


隣に座ってても何も話せないけど、
こうしてまた隣にいれるのは
6年前とは全く違う。


君がここにいるなら
またもう一度辛抱強く待つよ。
もう2度と離さないと誓ったから。



瀬木 side 終
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